はじめに
「脳梗塞は冬の病気」と思っていませんか。 実は、真夏にも発症が増える時期があると報告されています。 その大きな原因のひとつが 脱水(体の水分が足りなくなる状態)です。 汗で体の水分が減ると、血液が濃くなり流れにくくなります。 今日は、夏の脳梗塞をテーマに、家庭でできる備えを一緒に考えていきましょう。
この記事でわかること
- 夏に脳梗塞が増えると言われる理由
- 脳梗塞の3つのタイプと特徴
- ご家庭でできる水分補給と暮らしの工夫
脳梗塞とは
脳梗塞とは、脳の血管がつまる病気です。 血の流れが止まると、その先の脳の細胞が酸素不足になります。 タイプは大きく3つに分けられると報告されています。
- アテローム血栓性脳梗塞(太い血管が動脈硬化で細くなる/つまる)
- 心原性脳塞栓症(心臓でできた血のかたまりが脳に飛ぶ。心房細動が背景になることが多い)
- ラクナ梗塞(脳の細い血管がつまる。高血圧が背景になりやすい)
それぞれ原因や対策が少しずつ異なりますが、いずれも危険因子の管理が大切です(日本脳卒中学会, 2021)。
なぜ夏に増えると言われるのか
日本では、脳梗塞は冬に最も多いとされています。 一方で、6月から8月にもうひとつのピークがあると報告されています。 夏に増える背景には、次のような流れがあります。
- 暑さで汗が増える
- 体の水分が減る(脱水)
- 血液が濃くなり、粘り気が増す(血液濃縮)
- 血の流れがうっ滞し、血のかたまりができやすくなる
特に高齢の方は、口の渇きを感じにくくなる傾向があると指摘されています。 「のどが渇いてから飲む」では、すでに脱水が始まっている場合があります。
特に気をつけたい方
次のような方は、夏の脱水による影響を受けやすいと考えられています。
- 65歳以上の方
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症のある方
- 心房細動(脈の乱れる不整脈)を指摘されている方
- 降圧薬や利尿薬を服用中の方
- 過去に脳梗塞・一過性脳虚血発作(TIA)と言われたことがある方
ただし、心不全や腎臓の病気がある方は、飲水量に注意が必要です。 水分量については、必ず主治医の先生にご相談ください。
予防の基本 〜水分補給〜
成人で1日あたり 1.2〜1.5L を目安にこまめに飲むことがすすめられています。 一気にではなく、コップ1杯ずつ、回数を分けてとるのがコツです。
特に意識したいタイミングは次のとおりです。
- 朝、起きてすぐ
- 就寝前
- 入浴の前と後
- 外出の前後
- 食事のとき
汗を多くかいた日は、塩分を含む経口補水液なども選択肢になります。 一方で、アルコールやコーヒー・濃いお茶は利尿作用があり、水分補給にはなりにくいとされています。 ビールで水分補給、という考え方は避けましょう。
エアコンを我慢しない
「電気代がもったいない」「体に悪い」と、エアコンをためらう方もいらっしゃいます。 しかし、室内の暑さは脱水や熱中症の大きな引き金になります。 室温は 28℃以下 を目安にすることがすすめられています。 扇風機との併用や、こまめな換気も役立ちます。
危険因子を整える
夏に限らず、脳梗塞の予防には日々の管理が大切です。
- 血圧を毎日測り、記録する
- 糖尿病・脂質異常症の治療を続ける
- 不整脈(心房細動)の有無を定期的にチェックする
- 禁煙、節酒
- 適度な運動と、バランスのとれた食事
「自己判断でお薬を減らす」ことは避けてください。 気になる症状や副作用は、必ず主治医にご相談ください。
見逃せないサイン 「FAST」
万一に備えて、ご家族で FAST(ファスト)を共有しておきましょう。
- F — Face: 顔の片側がゆがむ、笑顔が左右非対称
- A — Arm: 片方の腕に力が入らず、下がってくる
- S — Speech: ろれつが回らない、言葉が出ない
- T — Time: ひとつでも当てはまれば、迷わず 119番。症状が出た時刻をメモ
数分でおさまっても油断は禁物です。 **一過性脳虚血発作(TIA)**は、本格的な脳梗塞の前触れになる場合があります(日本脳卒中学会, 2021)。 症状が消えても、その日のうちに医療機関にご相談ください。
当院でのサポートについて
当院では、脳神経外科の視点から、生活習慣病の管理や脳梗塞の危険因子の評価をご相談いただけます。 症状のない段階での検査は脳ドックのご案内をご覧ください。 「夏になると体調が落ちる」「血圧の変動が気になる」といったご相談もお気軽にどうぞ。 ただし、急な症状が出たときは、まず119番を最優先にお願いします。
まとめ
夏の脳梗塞は、脱水と血液濃縮が大きな引き金になると報告されています。 こまめな水分、適切な室温、危険因子の管理。 小さな積み重ねが、ご自身とご家族の安心につながります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療については医師の診察をお受けください。