はじめに
「最近つまずきやすい」「親が玄関で転んだ」。 そんな声を耳にする機会が増えていませんか。 高齢期の転倒は、骨折や寝たきりにつながる場合があります。 一方で、運動と住まいの工夫で予防できる部分も大きいと報告されています。 「年だから仕方ない」とあきらめず、一緒に備えていきましょう。
この記事でわかること
- 転倒の原因は身体・環境・薬・病気が重なって起きること
- 自宅でできるバランス・筋力運動の例
- 住まいの環境改善と、北海道の冬の歩き方の工夫
高齢者の転倒、いまの現状
国内の調査では、65歳以上の方の約2〜3割が年1回以上転倒すると報告されています(日本老年医学会)。 特に足の付け根(大腿骨近位部)の骨折は、その後の生活機能に影響を及ぼす場合があります。 「転ぶ → 骨折 → 寝たきり」という流れは、早めの備えで断ち切れる可能性があります。
転倒の原因はひとつではありません
転倒は、いくつかの要因が重なって起きることが多いとされています。
身体の要因 下肢(足腰)の筋力低下、バランス能力の低下、視力や認知機能(記憶や判断する力)の低下などです。 ロコモ(足腰が弱って動きにくくなった状態:ロコモティブシンドローム)が背景にあることもあります。
環境の要因 段差、滑りやすい床、暗い廊下、電気コード、めくれた絨毯(じゅうたん)などが代表的です。室内での転倒も少なくないと報告されています。
薬の要因 睡眠薬、一部の降圧薬、抗精神病薬、抗うつ薬などで、ふらつきや眠気が出る場合があります。複数の薬を飲む方(多剤併用)は注意が必要です。
病気の要因 パーキンソン病、起立性低血圧(立ちあがった時の血圧低下)、めまい、末梢神経障害(手足のしびれ)、てんかん発作なども背景になり得ます。
原因を整理すると、対策の優先順位が見えてきます。
自宅でできる運動の例
無理のない範囲で、安全に行えるものから始めてみてください。
バランス
- 片足立ち:机や椅子の背につかまり、片足を少し上げて立ちます(左右1分ずつ目安)
- タンデム立位(両足を一直線に並べて立つ姿勢):かかとと反対のつま先をつけて立ちます
筋力
- 椅子からの立ち座り:背筋を伸ばし、ゆっくり10回程度
- かかと上げ:壁や机に手を添え、つま先立ちと戻すを10〜20回
柔軟性
- ふくらはぎ・太もも裏のストレッチを各20〜30秒
週2〜3回を目安に、痛みのない範囲で続けることが勧められています。 体調が悪い日は無理をせず、お休みしてかまいません。
住まいの環境を見直しましょう
少しの工夫で、転倒の危険を減らせる場合があります。
- 玄関・廊下・階段・トイレ・浴室に手すりを設置
- 小さな段差は解消、もしくは目立つ色のテープで注意を促す
- 浴室には滑り止めマットや椅子(シャワーチェア)を活用
- 夜間の足元灯、寝室からトイレまでの動線を確保
- 床のコードや絨毯のめくれを片付ける
介護保険の住宅改修や福祉用具のレンタル制度が使える場合もあります。地域包括支援センターにご相談ください。
ご家族にできるサポート
ご本人を支えるご家族の役割も大切です。
- 服薬の見直し:ふらつきが気になる薬がないか、主治医や薬剤師にご相談を
- 視力・聴力の定期チェックをお勧めする
- 「危ないからやめて」ではなく、安全な代替案を一緒に考える
- 転んだエピソードを記録し、受診時に医師へ伝える
頭ごなしに行動を制限すると、活動量が下がり、かえって筋力が落ちる場合もあります。「どうしたら安全にできるか」の視点が役立ちます。
北海道・小樽の冬を安全に
冬の凍結路面は転倒の大きな要因です。外出時は次を意識してみてください。
- 歩幅は小さく、重心はやや低く(ペンギン歩き)
- 滑り止め付きの靴底や着脱式の滑り止め器具を活用
- 急がず、両手をふさがない(カバンは肩がけが安心)
- マンホール、横断歩道の白線、店舗の出入口は凍りやすく注意
- 凍結が強い日はご家族の付き添いも検討
受診を考えたいサイン
次のようなときは、早めの相談が勧められます。
- 半年以内に2回以上転んだ
- 立ち上がるとふらつく、めまいがある
- 足がもつれる、すり足になってきた
- 内服薬を始めてからふらつきが増えた
- 頭を打ったあとの頭痛・吐き気・意識のぼんやり(速やかに受診を)
当院でのサポート
当院では、転倒の背景にある運動器・神経の状態を一緒に確認し、服薬の整理もご相談に応じています。 骨粗鬆症が疑われる場合は、骨密度検査を行える医療機関へご紹介します。 ご家族とご一緒の受診も歓迎しています。
まとめ
転倒は複数の要因が重なって起こりますが、運動・環境・薬・病気の見直しで予防できる部分があります。 気になる変化があれば、お気軽に医療機関へご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療については医師の診察をお受けください。